理系脳で紐解く日本の古代史

既存の古代史に挑戦!技術と交通インフラを軸に紀元前2世紀頃から6世紀頃までの古代史を再考する!

54 準構造船(1)


f:id:SHIGEKISAITO:20200413094600j:plain <一支国博物館の準構造船復元模型>

実は謎の多い準構造船
 弥生時代後期、ないしは3世紀頃から現われたとされる準構造船について、実態はどのようなものだったのか考察してみます。
 技術の発展段階による船の7分類(第52回ブログで言及)を再掲します。

 船体の特徴から、
① 単材刳舟
② 複材刳舟
③ 準構造船
④ 箱型構造船
⑤ 日本型構造船
⑥ 中国型構造船
⑦ 西洋型構造船
に分類し、さらに①②を刳舟、②③を縫合船、④⑤⑥⑦を構造船と大括りしています。

 『日本書紀』にはスサノオノミコトが杉と樟を造船用と定めた記事が載っている(第51・52回ブログ)。その樟は幹が太いため幅広の船体をつくるのに都合が良い反面、低いところで枝分かれするため長い材が取れない。
 そこで刳舟(丸木舟)部材を前後につないだ複材刳舟が生まれたとも言われます。

 準構造船は、その複材刳舟に舷側板を付加して深さを増し耐航性を高めた船体のことを指します。

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53 丸木舟の製作と外洋航行を科学する

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丸木舟の製作は困難を極めた!
 縄文から弥生時代にかけて、丸木舟(刳り舟)は次のように製作されていたと想定されます。
 単材の丸木舟を1艘製作するには、まず石斧で最低でも太さ1メートルくらいの巨木を伐り倒さなければならない。
 その石斧ですが、旧石器時代に使われた打製石器の握り斧に対し、縄文時代の柄をつけた石斧(柄と刃先が平行になっている縦斧)は、打撃力が10倍になると言われています。
 第27回ブログで言及した国立科学博物館の実験では、太さ1メートルの巨木を伐採するのに縦斧を36225回も打ち込んでいます。大勢で交代しながら6日間にわたって打ち込んだらしい。単純計算で6秒に1回打ち込んだことになります。大変な労力!

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52 古代の舟

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 第27回ブログの「実験航海」で触れたように、約3万年前の旧石器人が日本列島にやってきた渡航手段は丸木舟だった可能性が出てきました。この実験航海の成功もあって、古代史愛好家の間で、「古代の舟」に対する関心が非常に高まっているようです。
 交通インフラ・交通手段に関心が集まることは嬉しい限りです。

 一般に、海や河川の上を進む「ふね」は、「船」または「舟」と書かれます。
 当ブログでは、乗員が10人以下の「ふね」に対しては「舟」を、準構造船や構造船などの大きな「ふね」に対しては「船」の字を当てることにしています。
 まず今回は、紀元前から3世紀頃までの「舟」について考えてみます。

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51 木材加工技術と工具・道具

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 古代の舟と航海に言及する前に、「舟の製作に欠かせない木材加工」について確認しておきます。第26回ブログで簡単にまとめてありますが、もう少し詳しく掘り下げてみます。

木材加工道具と刃先の歴史
 木材加工では、斧と鑿(のみ)がもっとも原初的な道具です。縄文時代は木の柄(え)につける刃先は石製で、素材には硬い蛇紋岩や硬質頁岩(けつがん)などが使われたようです。

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50 ヒスイは語る

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 前回の黒曜石に続いて、遠隔地交易の存在を裏づける考古遺物として、ヒスイを取りあげます。ヒスイは、「空飛ぶ宝石」と言われるカワセミ(別名、翡翠とも)の羽毛の色に似ていることから命名されました。もともとカワセミの雄は「翡」、雌は「翠」と呼んでいたようです。 

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