理系脳で紐解く日本の古代史

既存の古代史に挑戦!技術と交通インフラを軸に紀元前2世紀頃から6世紀頃までの古代史を再考する!

141 丹波・丹後の豪族


   <阿蘇海と天橋立>

 前回は日向諸県君氏について詳述しましたが、今回は、これまでも繰り返し触れてきた「丹波・丹後の豪族」を取り上げます(第69回・82回・95回・96回・110回ブログで言及した)。

 ただし過去の内容は、ヤマト王権の歴史に付随して言及したため、断片的で一貫性がありませんでした。今回、これらを連結して「丹波・丹後地域の豪族」として、3世紀頃から5、6世紀頃までを通史的に纏めなおしてみます。

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140 日下宮王家・髪長媛伝承と日下部連氏


 <行田古代蓮の里>

 今回は、第111回・第136回ブログで言及したものの、詳しい論考を先延ばししてきた件について言及します。

 「日向諸県君が娘を仁徳の大王妃にする物語」と、「その後、河内日下を基盤とした日向の勢力(日下宮王家とも)が王権内で一定の勢力を確保する」件です。
 あちらこちらと話が飛びますが、深掘りしてみます。

 筆者は、5世紀後半に雄略が存在し葛城氏と覇を争っていたこと、河内日下には朝鮮外交で葛城氏と意を同じくする豪族(仮に河内日下氏と呼んでおこうか)がいたことまでは認めたいと思います。

 しかし、仁徳妃の髪長姫が遠路日向からやって来て河内日下で暮らし、そこに父の日向諸県君氏をバックに日下宮王家ともいうべき一大勢力を形成し、さらに大勢の隼人族が移住して馬飼の一大拠点となったというストーリーには大きな違和感があります。何とも言えない胡散臭さを感じてしまいます。
 真実はどこにあるのか、この謎解きに挑戦してみます。

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139 稲荷山鉄剣と江田船山大刀は雄略による広域支配の証拠?


 <須賀川牡丹園(福島)>

 稲荷山古墳出土の鉄剣と江田船山古墳出土の大刀は、雄略の時代におけるヤマト王権の版図を判断する大きな根拠とされてきました。
 この2つの考古物によって、5世紀後半のヤマト王権の支配が関東北部から九州中部までの広域に及んだという見解が定説化しているわけです。

 しかし、古代史の定説といわれているものには、目的のためには多少の矛盾には目をつぶり、各々の資料・史料の都合のよいところだけ利用するという傾向が多々あるようです。
 2つの考古物は、大和政権中心史観(第18回ブログ)に沿って、都合よく、安易に解釈されてしまったのではないだろうか。加えて『記・紀』の解釈にも恣意的なものが見られます。もしそうだとすると、雄略の時に日本列島の大半を支配したという通説はたちまち瓦解してしまう……。

 今回はこの定説にメスを入れてみます。

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138 古代の戦争とヤマト王権の軍団について

 
 <須賀川牡丹園(福島)>

 ヤマト王権の版図拡大に関連して、今まで言及した内容も含めて、古代の戦争の実態について整理してみます。さらに5世紀のヤマト王権の軍団がどのようなものだったのか掘り下げてみます。

 古代の日本では戦争がすべて
 大東亜戦争後の80年にわたる平和の継続と民主主義の定着は、日本の歴史上きわめて稀有なことであって、このセンスで古代を眺めると、大きな間違いを犯してしまいます。

 古代は生き抜くことこそ最優先、弱肉強食の世界です。
 食や資源を求めて、戦争や小競り合いは間断なく続き、もちろん民主主義など存在せず、指導者は戦うリーダーないしはライバルを嵌めて追い落とす能力、はたまた戦闘集団のサポートを得ていることが絶対要件でした。

 もっとも、現代を論じる時でさえ、世界的には常識である「平和は軍事力の裏づけなくしては保持できない」という当たり前の理屈が日本では共有されていません。極東軍事裁判史観が左向きの学者や歴史研究者の間では有力です。このようなスタンスが敗戦後80年を経ても、今なお古代史を俯瞰する場合に影響を与えていると思われます。

 では7世紀以降は?
 「和を以て貴と為し、忤(さか)ふること無きを宗とせよ……」という言葉があるので、日本人は古来より平和を尊び殺戮を嫌ったとも言われますが、本当でしょうか。「和」を重視する気風が薄かったからこそ、十七条の憲法の筆頭に掲げられたのでは……。

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137 隅田八幡神社人物画像鏡の銘文解釈


<クレマチスの丘(静岡)>

 第135回ブログで言及した隅田八幡神社(すだはちまん、859年創建)所蔵の人物画像鏡について深掘りしてみます。
 隅田八幡神社の人物画像鏡は、青銅製で径19.9センチ。正確な出土年代や出土地は定かでないが、古代史を検討する際の貴重な同時代資料とされています。しかし、周縁部に鋳出しされた漢字48字の銘文は、読み方と解釈が難しく、研究者から多くの異説が出されています。

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