古代史総論
<近江八幡堀> 第135回・136回・138回ブログを振り返ると、ヤマト王権は雄略の時代に専制化したかのように思えます。しかし前回のブログでは、雄略以後の王権内は大混迷であったと綴りました。混迷の後、7、8世紀にかけてヤマト王権(大和政権)の政治体…
<ギリシャの地形図> ギリシャの空間構造に似た日本列島の地形 前回のブログで言及した「脊梁山脈の縦貫・分断された国土・狭く少ない平野」に関連して、松木武彦氏による興味深い論考を見つけました。当ブログにとって大切なポイントなので、少々長くなる…
第27回のブログでは、3万年前の航海を再現する実験考古学について言及しました。ホモサピエンスが南西諸島方面から日本列島へと航海した謎を解くためのプロジェクトでしたね。 ここであらためて、日本人の祖先はいつ頃どこからやってきたのか、その歴史を、…
第18回ブログの「政治連合(共立)説」でも言及しましたが、通説では、2世紀後半頃の日本列島で、鉄の入手をめぐる広域戦争が発生したとされています。「鉄資源の獲得」や「鉄の交易路掌握」をめぐる争いです。根拠は、『魏志倭人伝』に記載のある倭国大乱…
<コスモス> 前回、ムラやクニが、国になり中央集権国家へと態様を変えながら集約していくプロセスと集住・集権規模に言及しました。ムラから始まり、次々と段階を踏んでいくための要件を考えてみましょう。 水辺の地⇒ 交通インフラの整備⇒ 専門特化層の充実 …
<彼岸花> 倭国という表現 当然ながら、古代の日本列島には「日本」と称した国はありませんでした。にもかかわらず万世一系の思想のように、紀元前から一貫して今のような枠組みがあったかのような古代史も存在します。しかしそれは意図的に設定された枠組み…
歴史人口学を専門とする鬼頭宏氏の著書に、日本の人口の変化を詳しく綴った論考があります。縄文から弥生時代にかけての人口推計は小山修三氏の研究がベースになっているようです。今回はこれをもとに、古代の日本列島の姿をイメージしてみたいと思います。
ブログがだいぶ進んできましたが、今後の論考において、たびたび登場するであろう古代天皇の表記と想定される在位について述べておきます。研究者による様々な考え方がありますが、当ブログを読んでいただく際の混乱を避けるために、筆者の考え方を明確にし…
<伊勢神宮内宮> 日本列島の広域を「急速に」支配することは不可能 『記・紀』を忠実になぞってみれば、ヤマト王権による列島支配はきわめて順調に進んだように思えます。 崇神の頃(3世紀末か)には、四道将軍派遣により、北は関東から東北南部まで、西は岡…
< ワタスゲ > 前回までのブログで、神話を過度に織り込んだ古代史の問題点を洗い出しました。冷静に考えれば、「神話をベースにした歴史」はあり得ないのですが、実際は在野の研究者や歴史作家の論考に、この種のトンデモ古代史がたくさん見られるのです。ご…
<若狭彦神社本殿と中門 手前は拝殿跡> 前回は、アマテラスを祀る伊勢神宮の歴史が7世紀より前には遡らないことを確認しましたが、今回は一般の神社と古代史との関連を探るため、その起源や変遷について考えてみます。 謎に包まれた神道・神社の起源 神道の…
<朝焼け> 今回は、第11回ブログで予告した「建国神話における最高神の創作」について述べます。 「2世紀後半頃に存在したとされる卑弥呼は、アマテラスそのものである」と公言する研究者が結構多いのですが、いくら強弁しても、そこにはとんでもない勘違い…
前回のブログで、政権中央によって新しく創作された建国神話は、地方の神話、民衆の神話が持つ「神話力」を利用しながら作られたと述べました。 誰も知らない神々ばかりが活躍する神話ではなく、民衆が伝承してきたよく知られた神話や、各氏族に伝わる神話を…
神話は、物事の始まりを神がつくり出した、或いは神が決めたと語る物語です。実際にあったかどうかを問うものではなく、それを信じる人が真実として語るものでしょう。今回は、日本の建国を綴った記紀神話と古代史の関係について考えてみます。
文字の古史料 日本人が文字に接触してから使いこなすまでの歴史は、おおよそ以下のような経緯をたどったと想定されます。 まずは接触のエビデンスです。• 西暦57年===志賀島で発見された金印に刻まれた「漢委奴国王」の文字。•1~2世紀====弥生遺跡…
人類進化の大きな画期となった「ことば」の発明 人類は、「ことば」が使用される以前、意思疎通を表情、身振り、叫び声でやり取りしていたわけです。ノンバーバルコミュニケーションですね。 アメリカの心理学者メラビアンが実験したところによると、意外な…
『古事記』の編纂には謎が多いし偽書だとする説もあります。『古事記』が、江戸時代後期まで、表舞台にほとんど登場せず埋没していたのに対し、『日本書紀』の方は、編纂の翌年から平安期まで、官僚の教科書として機能してきました。 それはともかく、今回は…
当ブログは、筆者の関心事の備忘録でもあります。したがって、その都度思いついたことを徒然なるままに綴っていきます。 まずは、最も古い歴史書と言われる『古事記』『日本書紀』に向き合う、筆者のスタンスを述べることにします。 『古事記』は712年、『日…
筆者は長年にわたって『古事記』『日本書紀』を研究し、さらに5年かけて、全国津々浦々に鎮座する「一宮」103社をすべて参拝しました。ちょっとした自慢でもあります。 日本各地には 8万社以上もの神社が存在します。その中で歴史が古く格式の高い神社は「…