理系脳で紐解く日本の古代史

既存の古代史に挑戦!技術と交通インフラを軸に紀元前2世紀頃から6世紀頃までの古代史を再考する!

52 古代の舟

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 第27回ブログの「実験航海」で触れたように、約3万年前の旧石器人が日本列島にやってきた渡航手段は丸木舟だった可能性が出てきました。この実験航海の成功もあって、古代史愛好家の間で、「古代の舟」に対する関心が非常に高まっているようです。
 交通インフラ・交通手段に関心が集まることは嬉しい限りです。

 一般に、海や河川の上を進む「ふね」は、「船」または「舟」と書かれます。
 当ブログでは、乗員が10人以下の「ふね」に対しては「舟」を、準構造船や構造船などの大きな「ふね」に対しては「船」の字を当てることにしています。
 まず今回は、紀元前から3世紀頃までの「舟」について考えてみます。

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51 木材加工技術と工具・道具

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 古代の舟と航海に言及する前に、「舟の製作に欠かせない木材加工」について確認しておきます。第26回ブログで簡単にまとめてありますが、もう少し詳しく掘り下げてみます。

木材加工道具と刃先の歴史
 木材加工では、斧と鑿(のみ)がもっとも原初的な道具です。縄文時代は木の柄(え)につける刃先は石製で、素材には硬い蛇紋岩や硬質頁岩(けつがん)などが使われたようです。

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50 ヒスイは語る

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 前回の黒曜石に続いて、遠隔地交易の存在を裏づける考古遺物として、ヒスイを取りあげます。ヒスイは、「空飛ぶ宝石」と言われるカワセミ(別名、翡翠とも)の羽毛の色に似ていることから命名されました。もともとカワセミの雄は「翡」、雌は「翠」と呼んでいたようです。 

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49 黒曜石は語る

f:id:SHIGEKISAITO:20200324213559j:plain <黒曜石の黒い層(神津島)>

 今回と次回は、第25・26回のブログで予告した通り、黒曜石とヒスイに言及します。
 当ブログでは、古墳時代前期までの海・陸の交通インフラが極めて貧弱だったことを確認してきました。一方、紀元前のはるか昔に、黒曜石・ヒスイ・天然アスファルト・琥珀などの「特定物質」が、想像を超えるような遠隔地まで運ばれていたという考古学的な事実があります。
 黒曜石やヒスイなどの原産地と出土地を調べることで、先史時代における遠距離交易の実態が分かってきたのです。
 まずは黒曜石が物語ること、これを紐解いてみます。

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48 馬の利用

f:id:SHIGEKISAITO:20200113171655j:plain <勧修寺の菖蒲>

 急遽思いつきました。陸上交通といえば馬を欠かすわけにはいきませんね。今回は馬について言及します(第44回ブログで予告)。

 『日本書紀』には、スサノオ(神代だけど、あえて言えば弥生時代かな?)が、いろいろな乱暴狼藉をする場面で、まだら毛の馬を放して田の中を荒らし、まだら毛の馬の皮を剥いで斎服殿(いみはたどの)の屋根に穴をあけて投げ入れた、とあります。

 一方、『魏志倭人伝』には、3世紀頃の日本(九州のことか?)に馬はいなかったと書いてあります。
 <其の地に牛・馬・虎・豹・羊・鵲(かささぎ)無し>。
 さて、その真偽のほどは?

 実際のところ、縄文・弥生時代の日本には馬はいなかったのです。そればかりでなく5、6世紀頃までの古代日本では、交通に占める馬のウエイトは高くありませんでした。

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