理系脳で紐解く日本の古代史

既存の古代史に挑戦!技術と交通インフラを軸に紀元前2世紀頃から6世紀頃までの古代史を再考する!

62 玄界灘沿岸のクニグニ・半島との交易(1)

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<着陸寸前の機内から海食崖の続く対馬を望む>

 紀元前の古代シナや朝鮮半島の人びとが、九州北部を「倭国」や「倭人のクニ」と認識していたかどうかに関係なく、九州北部にムラが生まれ、やがてクニに成長し、それらのクニグニが朝鮮半島と交易をしていたことは考古学的事実です。

 

玄界灘沿岸のクニの誕生・半島との交易
 もともと、日本列島と朝鮮半島の間では、水田稲作の伝来(第60回ブログ)よりもはるか昔、縄文時代まで遡り、おそらく7000年ほど前から交流があったことが確認されています。朝鮮半島との南北交易の中心は半島に近い九州北部であったことは間違いありません。
 半島南部からは縄文土器が、対馬・壱岐や九州北部からは半島南部の櫛目文土器が見つかっているのが、その証拠です。渡海ルートは間違いなく『魏志倭人伝』に記載のある「対馬壱岐ルート」でしょう。

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61 クニの始まりと倭人について

 f:id:SHIGEKISAITO:20200907144658j:plain <鏡山頂上から虹の松原を望む(唐津市)>

 <夫れ楽浪海中に倭人有り、分かれて百余国と為る。歳時を以て来り献見すと云ふ>。
 これは『漢書地理志』に記された有名なフレーズですね。シナの史書における「倭人」という言葉の初出とされます。
 多くの古代史本で、この一文を日本のクニの始まりとして採り上げ、「紀元前1世紀頃の日本が百余国に分立し、漢に定期的に朝貢していた」と解説しています。
 
 それらの古代史本を思いつくまま挙げてみます。
〇 高校教科書 日本史B
〇 詳説 日本史図録(山川出版社)
〇 図説 日本史通覧(帝国書院)
〇 岩波新書 シリーズ日本古代史②ヤマト王権
〇 もう一度読む山川日本史
〇 一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書

 他にも今人気のある百田尚樹、出口治明、佐藤優の各氏による著作など、枚挙にいとまがありません。
 でも、ここでいう「倭人」は本当に日本列島人を指していて、しかも紀元前からシナに朝貢していたのでしょうか。定期的に毎年、貢物を満載した丸木舟を漕いで対馬海峡を渡っていたということでしょうか。

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60 水田稲作の伝来・伝播 

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弥生時代とは?
 藤尾慎一郎氏による『弥生時代の歴史』は、紀元前10世紀頃から紀元後3世紀頃までの日本列島の状況を知ることができる良書です。
 今回は、同書からの抜粋を中心に、池橋宏氏の稲作渡来の論考も加味して、九州北部と本州における弥生時代の景色を眺めてみましょう。

 従来、弥生時代を特徴づけるものとして、弥生土器、水田稲作、金属器(鉄や青銅)の三点セットが挙げられ、弥生時代は紀元前3~4世紀頃から始まったとされていました。
 現在では、土器で時代区分をするのは不合理になって、日本列島に人類が出現する紀元前3万4000年以降のうち、「水田稲作を生活全般の中におくことで、社会的・政治的変化が起きた時代を弥生時代とする」認識に変わってきました。

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59 当ブログのこれから

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 前回までで、「古代史に向き合うスタンス(第1~10回)」、「神話や考古学に向き合うスタンス(第11~24回)」、「人・モノ・情報のネットワークと古代の技術・交通インフラ(第25~58回)」について、ひと通り言及しました。ブログをスタートしてから既に1年半

 読者の存在に配慮せず、ため込んだ文献・資料を整理するため、頭の中で思案していたネタを具現化するため、それらを漏らさず文章に落とし込むため、というもっぱら自分向けの理由から、これだけの期間を要してしまった……。
 でも、「理系的視点に基づいた骨太の古代史(第1、2回ブログ)」を描くために、筆者にとっては欠くべからざる重要なプロセスでもありました。

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58 『記・紀』に登場する船・舟

f:id:SHIGEKISAITO:20200515144117j:plain  <磐船神社・社殿に覆い被さる巨岩>

 「山は隔て、海は結ぶ」という言葉がある。古代日本にとって海は重要な交通路だった。海に囲まれた日本は、外国との往来は船に頼るしかない。日本列島を取り囲む海や、強い流れの海流・潮流は自然の障壁でもあったが、古代人はこれを乗り越え、盛んな交流・交易を行なってきた。
 シナ大陸が陸運の文明だとすれば、日本は水運の文明だったともいえる。

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